【障害者を扶養に入れる場合】扶養にも種類があるって知っていますか?扶養家族が障害者の場合、社会保険の年間収入条件が緩和されたり、障害年金が非課税扱いになったりと特別措置があります。(突然大病を患ったら… その32)
こんにちは。障害者で社労士タマゴの、tomoです。
昨日は銀座でリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックのメダリストによる凱旋パレードがありましたね! tomo は日中外出していてリアルタイムではテレビを見れませんでしたが、twitter で多くの人がツイートしているのを見ていました。
メダリストパレードに合わせて昨日・今日と、以前 tomo がパレードについて思うところを書いた下記の記事に、とっても多くのアクセスが集まっています。願わくば、沿道やテレビ・PC・スマホの前の多くの方に、オリンピックメダリストと共に、パラリンピックのメダリストも、印象に残ればいいなと思います。
さぁ、では本日の記事に入りましょう。
先日より「障害者と社会保険」というテーマで連載記事を書いています。
1) そもそも社会保険とは?
2) 障害者と年金
3) 障害者と健康保険
4) 障害者を扶養に入れる際の年間収入は? ←今日はココ
5) 障害者と雇用保険
「障害者と社会保険」第4回目の本日は、障害者を扶養に入れる際の年間収入に焦点を当てて解説していきます。
なお、以前取り上げたテーマ「障害者と税金」の記事はこちらをご覧ください。
それでは早速、始めましょう!
✔︎ 「扶養」にも色々あるってご存知ですか?
ところで、よく「扶養にいれる・はいる」とか「扶養家族」とか言いますが、扶養にも色々あるということ、ご存知でしょうか?実はひとくちに扶養と言っても、様々な違いがあるんです。
例えば。
何の扶養にいれる・はいるのか。
または、扶養できる範囲・対象はどこまでか。
そして、扶養していると何がどうなるのか。
その違いを整理する上で、とても重要になってくるのが「被扶養者の範囲」と「被扶養者の条件」です。ちなみに、被扶養者とは扶養にはいる側の人です。夫が妻と子供を扶養にいれるケースの場合は、夫(父親)の扶養にはいる妻と子供が、被扶養者です。
✔︎ 税金の扶養と、社会保険の扶養の違い
まず、「何の扶養にいれる・はいるのか」から見ていきましょう。
✔︎ 税金の被扶養者の範囲と条件
所得税は国税、一方の住民税は地方税…と、それぞれ異なる税金ですが、この二つは同一の手続き情報(申告内容)を元に税金額を確定させます。その申告が、年に一度行う年末調整や確定申告などです。ということはつまり、所得税も住民税も、扶養の定義はほぼ同じということになります。(住民税は所得税よりも控除額が少なめに設定されています。所得税が0でも住民税がかかるというケースもありますので、詳しくは税理士事務所等にご相談されてみてくださいね)
● 被扶養者の範囲
✔︎ 控除対象配偶者: 納税者の配偶者
✔︎ 控除対象扶養親族: 納税者の配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)で、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の者
● 被扶養者の条件
✔︎ 納税者と同一生計であること
✔︎ 年間(※)の合計所得金額が38万円以下であること
※ その年の1月から12月の間の所得を指す
つまり子供を養っていても、16歳未満の子供は税金の控除対象になりません(その代わり児童手当が新設されました)。
また38万円以下の所得とは、全額給与所得だけの場合、年間収入金額(年収)が103万円以下の場合を指します。
収入金額103万円-給与所得控除65万円=合計所得金額38万円
なお住民税の扶養控除を受けるには、年間収入金額を103万円ではなく100万円以下に抑える必要があると言われていますので、ご注意ください。
また、扶養にはいる被扶養者が、老齢年金をもらっていたり、不動産所得(家賃収入)や一時所得などの給与所得以外がある場合は、それも加味した上で年間の合計所得を見ていく必要があるのをお忘れなく☆
ちなみに。受け取る年金でも、違いがあるので注意が必要です。
老齢年金は雑所得として収入扱いになるのに対して、遺族年金や障害年金は非課税対象となり、収入としてみなされません。同様に、雇用保険の基本手当(失業保険・失業手当・失業給付)、健康保険の傷病手当金や出産手当金・出産育児一時金、生活保護の給付金なども非課税対象となり、収入としてみなされません。
障害者を扶養家族にする場合に受けられる税制上の控除等については、こちらの記事に詳しくご説明をしています。ぜひご一緒に見てみてくださいね。
つまり扶養家族が障害者で、障害年金を受け取っている場合は、税金面でかなりのメリットがあるということになります。
そして結構誤解しがちなのが、被扶養者条件の※印のところです。
納税者(扶養者)の配偶者が、年の途中で会社を退職をしたので扶養にいれたいと思っても、すでに退職時点でその年に103万円以上の収入がある場合、その年は税制面においては扶養には入れることができない(控除対象配偶者にはなれない)のです。
ここが、社会保険の年間収入の考え方と大きく異なる点です。
どう異なるのか。それを次に見ていきましょう。
✔︎ 年金の被扶養者の範囲と条件
次に、社会保険のうち年金の扶養について見ていきます。
まず税金の扶養と大きく違うのは、扶養しているとどうなのか、という点です。
税金は納税者(扶養者)に扶養配偶者や扶養家族がいると税金の控除を受けられます。つまり、もともと払うはずだった税金を減らすことができるのです。
それに対して社会保険の扶養とは、扶養する家族がいる場合、別途保険料を増額しなくても本人(被保険者)分の保険料で、扶養家族(被扶養者)分のサービスも受けることができるということを意味します。保険料は減りませんが、一人分で複数名分の保険料扱いになるということです。
ね? 同じ扶養でも考え方が全く異なりますよね。
では年金の扶養の定義を見てみましょう。
● 被扶養者(国民年金第3号被保険者)の範囲
✔︎ 配偶者
● 被扶養者の条件
✔︎ 年間(※)の収入額が130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は180万円未満)であること (※ 過去における収入ではなく、扶養にはいる時点以降(つまり未来)の収入見込み額)
✔︎ 扶養者(被保険者=国民年金第2号被保険者)と同居の場合
→ 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
✔︎ 扶養者(被保険者=国民年金第2号被保険者)と別居の場合
→ 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
ちょっといろいろな用語が出てきましたが、わかりやすく説明しますので、めげずについてきてくださいね!
まず、年金の被保険者(加入者)には、3種類の区分があるんです。
● 第2号被保険者: 会社等で働く会社員・公務員など
● 第3号被保険者: 第2号被保険者の配偶者
そして、年金の扶養にはいる、ということは、会社員である第2号被保険者の配偶者として、第3号被保険者になる、ということなのです。
ということは、つまり年金に関して扶養に入れるのは、配偶者のみということになります。子供も、親も、年金に関しては扶養することはできません。
● 雇用保険の基本手当(失業保険・失業手当・失業給付)
● 健康保険の傷病手当金
● 出産手当金
● 不動産収入
税金の場合と異なり、扶養にはいる(第3号被保険者になる)ことになった時点からの収入見込みでOKですので、バリバリ稼いでいた妻が会社を退職することになっても、そこから先の未来に130万円(60歳以上又は障害者の場合は180万円)の収入見込みがなければ、扶養にはいる(第3号被保険者になる)ことは可能です。
逆に、仕事を辞めても、辞める前の会社の健康保険を任意継続して、健康保険の傷病手当金をもらっていたり。ハローワークに届出をして雇用保険の基本手当(失業保険・失業手当・失業給付)をもらっていたりする場合は、容易に収入見込みが130万円(60歳以上又は障害者の場合は180万円)を超えてしまいますので注意が必要です。
ちなみに、年間収入額を月額・日額に直すと以下のような金額になります。
● 年間収入130万円未満
→ 月額108,333円未満。日額3,611円未満。
● 年間収入180万円未満
→ 月額150,000円未満。日額5,000円未満。
扶養対象にしたい配偶者が障害者の場合、年間収入の上限額が50万円も上がるのですね。障害年金が非課税となる税金の場合と異なり、社会保険の場合は障害年金は収入として加味されてしまいますが、それでもやはり50万円の差は、一般の配偶者と比較すると結構大きな差になりそうです。
なお日額で考える必要があるのは、主に雇用保険の基本手当(失業保険・失業手当・失業給付)をもらっているケースです。これについては改めて、明日の記事でもう少し補足説明させていただきます。
では、本日の記事、ちょっと長くなってきましたが、もう一項目だけご説明します!
✔︎ 健康保険の被扶養者の範囲と条件
最後にご説明するのは、もう一つの社会保険である健康保険の扶養です。
前回の記事でも触れたように、配偶者のみに限定されていた年金と異なり、健康保険では扶養の範囲は大きく広がります。(年間収入の条件は全く同じです)
では健康保険の扶養の定義を見てみましょう。
● 被扶養者の範囲
● 被保険者と別居でもいい人
✔︎ 配偶者
✔︎ 父母
✔︎ 祖父母
✔︎ 子
✔︎ 孫
✔︎ 弟妹
✔︎ 兄姉(平成28年10月から同居要件がなくなりました)
● 被保険者と同居(同一世帯)が条件の人
✔︎ 伯父伯母、叔父叔母
✔︎ 甥姪(とその配偶者)
✔︎ 内縁関係の配偶者の父母および子
(その配偶者の死後、引き続き同居をする場合も含む)
● 被扶養者の条件
✔︎ 年間(※)の収入額が130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は180万円未満)であること(※ 過去における収入ではなく、扶養にはいる時点以降(つまり未来)の収入見込み額)
✔︎ 扶養者(被保険者)と同居の場合
→ 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
✔︎ 扶養者(被保険者)と別居の場合
→ 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
とてもわかりやすい図があったので、参考に載せておきますね。
(引用元:東京織物健康保険組合)
健康保険に関しても、扶養家族に障害者がいる場合、180万円までの収入が認められています。これは大きな特別措置だなぁと思います。
ぜひ、ご家族が病気や怪我で障害を持つことになり、そのご家族を扶養するという場合は、税金・社会保険それぞれに分けて、どんな特別措置が受けられるか整理なさってみてくださいね。
ということで、本日の記事はこれにて終了といたします。
いろいろなことに触れたので、読んでいるうちに頭の中が????となってしまった方もいらっしゃると思います。記事を読みなおしてもよくわからない場合、遠慮なく tomo 宛にご連絡ください。
自らも障害者として一連の手続きを経験した社会保険労務士のタマゴ、tomoが回答させていただきます!!
感想コメントも、もちろん大歓迎です!!!!
励みになりますので、ご遠慮なくコメントをお寄せ頂けたら嬉しいです❤︎
以上、本日は「障害者と社会保険」の第4回目として、 扶養家族とその条件である年間収入額についてお送りしました〜!
本日も、最後までお読みいただきありがとうございます。